過日
エントリーをしていた
「建築と暮らしの手作りモダン アントニン&ノエミ・レーモンド」展のために、この日曜日に鎌倉にある神奈川県立近代美術館を訪れました。
さわやかな気候で、ちょっと遠出をするのにふさわしい日でしたが、その分鎌倉の街は人であふれかえっていました。
鎌倉駅から徒歩10分程、鶴岡八幡宮の境内に目指す美術館はあります。坂倉準三さん設計による建物は、平家池のほとりに落ち着いた佇まいを見せていました。
展覧会は、予想にたがわぬ充実した内容でした。
過日のエントリーでも参照した2007年9月24日の日経新聞の記事にもあったように、「人間としてのレーモンド」「国境を越えた人間どうしの触れ合い」といったテーマにかなったものになっていたと思います。アントニンとノエミの二人が二人三脚のように歩み続けた歴史が良く分かりました。
一方、同じ記事の中で「設計図や模型が並ぶ建築展ではなく」という記述もあったので、そういったものがほとんどないのかと思っていたのですが、やはりそんなことはありませんでした。これは予想が外れました。
むしろ、ノエミさんが描いた透視図や吉村順三さんの手による平面図や透視図などの図面類が充実していたことで、単に図面が並んでいるだけのものではない、という意味で普通の建築展とは違っていたのかもしれません。
画像引用元:港区立図書館「港区ゆかりの人物データベース」
時代を追って色々な作品が並んでいるわけですが、麻布笄町以前にあった霊南坂の自邸には驚きました。内外装ともに打ち放しの鉄筋コンクリート造という建物ですが、これが大正末〜昭和初めに建てられたものであるというのです。全体としてきわめて幾何学的でモダンな印象ですが、3畳と4畳半のたたみ部屋があり、建物が囲む庭は松の木も植えられた日本風でもあり、それらが違和感無く同居していると感じました。
しかしなんといっても、過日のエントリーでも余談として触れた、「聖アンセルモ目黒教会」ですね。本当にかっこいい!いまは亡きわが母校(教会はちゃんとあります!)。誇りです。図録にもカバー裏の折り返し部分にアンセルモの写真が使われていました。ここに小さな子どもが写っているのですが、幼稚園の園児ですね。いつ頃の写真かはわかりませんが、制服姿が懐かしいです。
そういえば、1976年にアントニン・レーモンドが亡くなった際、ここ聖アンセルモ教会で追悼式が営まれたと年表にありました。まさにこのとき、ここの幼稚園に通っておりました。もちろん、そんな大きなイベントがあったなどということは覚えてもいませんが。。
展示の最後は、レーモンドの教え子であった前川國男さん、吉村順三さん、ジョージ・ナカシマさん、そして増沢洵さんの4人の作品が展示されてました。彼らとの結びつきがあってのレーモンドという意味で、最後の締めにふさわしいものだったと思います。
神奈川県立近代美術館鎌倉館は、設計の坂倉さんが
コルビュジエの弟子であり友人であったということも大いに感じさせる建物だと思います。ピロティと大谷石が支える2階建ての建物は、軽快ですが決して軽薄ではなく、モダニズム建築の世界的な代表例というにふさわしい風格を備えています。
残念ながら、第三展示室が耐震上問題があるということで閉鎖されていました。よい解決策が見つかると良いのですが。